映像と音響を通して
原理を学び新しい視点をひらく
メディア創造コースでは、映像や音、スマートフォンやスピーカーなど身のまわりにあるメディアを通して、
いつもと異なる仕方で世界と出会うことを体験しながら学びます。
技術の習得を目的とするのではなく、「感じること」や「気づくこと」を手始めに、メディアの歴史や多様な使い方を体験的に学びながら、同じ技術でも時代や文脈によって表現が変わることに目を向けていくコースです。
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コース概要
●開講期間:4月〜7月下旬(150分×15回)
●開講日時:週1回(水曜 18時30分~21時10分)
※対面授業。一部オンラインでも受けられる授業あり。
●定員:1クラス編成で30名 -
授業内容
レクチャー (事例・視点の共有) と実習(企画・制作による理解)で構成された授業で、ユーザー体験の企画・制作にむけたメディアの利活用のかたちを探求します。 メディア (映像+ 音響) とユーザーの身体の間で体験が生まれる瞬間に立ち会うおもしろさは、手を動かしながら学ぶ〈桑沢〉ならではの授業です。
こんな方にオススメ
- デザイン教育は初めてで、光や音に興味がある方
- 日常のなにげない景色や音に新しい発見を見つけたい方
- 光や音の原理を体験的に学びたい方
- 手を動かしながら理解を深めたい方
映像のしくみをたどる
映像の生成・展開・再活用
カメラ・オブスキュラや視覚玩具を通して、
映画以前の映像体験とその仕組みにふれます。
光と影、ゼログラフィ、スキャンアートといった
身近な素材を手がかりに、「見る」という体験そのものを探ります。
映像の仕組みそのものに目を向けることで、
ふだんの景色に新しい視点をひらいていきます。
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▲カメラ・オブスキュラ
カメラの原理をシンプルな形で体験できる「カメラ・オブスキュラ」。ダンボール、トレーシングペーパー、虫眼鏡を用いて装置を組み立てると、身近な空間を新しい視点で捉えることができます。 -

▲ゼログラフィ
コピー機はふだん、複写のための事務用機器として使われています。しかしデザイナーのブルーノ・ムナーリは、ゼロックスの依頼を受けて「美的な画像を生み出すカメラ」としてコピー機を捉え、従来とは異なる利用方法を提案しました。私たちもまた、手を動かしながらガラス面を挟んで上部の被写体と下部の移動する光の出会いを探り、思いもよらない“写真”を生み出す実験に取り組みます。
音を聞いて視点をひらく
音響の再発見と映像との交錯
微細な響きを聴き分けながら、日常の音をあらためて見つめ直します。
音を聴くという行為から感覚や視点をひらき、
聴いた音をかたちにすることで、ふだんとちがう景色が見えてきます。
▲サウンドスケープ
イヤー・クリーニングと呼ばれる、「耳をひらく」ためのメソッドを応用して、文字や記号をはじめとする、さまざまな記述に取り組みます。手を動かしながら、自分自身の身体に「よく聴く」ことをうながし、音や響きで構成される世界を、いつもより繊細なものとしてとらえる機会をつくります。これも解像度を高めて周囲の世界と繊細に関わることを可能にする、そんな学習のひとつです。
メディアの表現を探る
新技術による拡張体験
VRカメラの利用やVR×ストーリー制作を通じて、
360度の映像空間に入り込むような体験を探ります。
映像と音響がひとつになることで新しいメディア表現の可能性をひらきます。
受講生の声
Q1このコースを選んだきっかけや理由は?
Q2レクチャーや実習の中で、特に印象に残っている授業は?
Q3これから受講を考えている人へのメッセージを聞かせてください。
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佐藤寿実
デザイン専攻科/夜間部 ビジュアルデザイン専攻2024年卒業
グラフィックデザイナー続きを読むコース新設を知ったきっかけは桑沢のSNSです。視覚伝達にとどまらないクリエイティブとの向き合い方や思考法を模索したく、受講することに決めました。過去に自分は演劇の演出やダンサーとしての経験もあり、グラフィックの世界だけでは少々窮屈に感じていたのかもしれません。また、自分は大学で民俗学を学んでいたのですが、オープンキャンパスにて御手洗先生も過去に民俗学の研究室にいながら「メディア論的な視点で」琵琶法師の研究をしていたと教えてくれて。自分にとってはその捉え方が新鮮そのもので、しかもVR・XR領域にいる玉置先生と組むのはもう面白くないわけがないと思い、気がついたら9月からまた桑沢にお世話になることになりました。
橋本典久さんが来てくださった3回目のレクチャーが印象に残っています。ゼログラフィ(パノラマ球)の事例、19世紀ヨーロッパ諸国の視覚玩具の復元事例を見させていただく中で、「視覚」や「色」って何ですか?ということにも触れてくださいました。目という感覚器官から得た情報を脳で処理して初めて「視える」という今考えたら義務教育で習ったり、一般教養的な内容ですが、デザインの学校で改めてこれを言われると、不確かさと確かさという両儀性で成立する「今」自分の見ている世界は、実は透明なのかもしれないと思いました。レクチャーを受ける前と後で自分の意識が明らかに変わったのを覚えています。生まれたての赤子のような。とても印象的な授業でした。
感覚・知覚をひらいていきたいなと思っている方。デザインの技術習得だけでは物足りない方。また、そういったことを漠然と思っているだけの方でも毎回深い学びを得られておすすめです。
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李思晴
留学生
続きを読むインターフェースデザインに興味があり、映像や音響などさまざまなメディアで体験をつくる面白さを学びたいと思いました。実際に手を動かしながら学べる環境で、日常の小さな気づきや新しい発見を増やしたいと思い、このコースを選びました。
ゼログラフィ(コピーアート)の授業がとても印象に残っています。印刷物やビー玉、カード、ボトルなど、身近にあるものを「絵の具」のように使って、コピー機で「絵」を描けるのがとても新鮮で、手を動かしてみて本当に面白かったです。
コピー機という「日常の道具」が、使い方を変えるだけでまったく違う表現の道具になることを体験し、普段当たり前に見ているものでも、視点を変えれば新しい可能性が生まれるのだと感じました。そこから、日常の中にある素材や道具にも、もっと自由に発想を向けてみようという考え方の変化がありました。難しく考えすぎず、まずは手を動かしてみることで、思わぬアイデアや新しい発見に出会えるのが、このコースの魅力だと思います。自分の感性をのびのびと試すことができ、とても楽しく学べるコースです。
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新井小都音
会社員(小売業) 、夜間附帯教育 基礎造形専攻 2024年度受講
続きを読む昨年度、基礎造形専攻で初めて桑沢の授業を受講し、自分で手を動かすことによる気づきが、日常生活や仕事での視野を広げる、あるいは視点を変えることを実感しました。単純に手を動かすことが好きで楽しかったのもありますが、作品を見せ合うことでの刺激もあり、とても充実した1年間でした。新設のコースでは、映像や音響など、自分と世界との繋がりに欠かせないメディアについて、座学とワークショップの2軸から学べるという点に興味を持ちました。メディアの成り立ちや発展について学び、それをワークショップを通して自らの体験に落とし込むことで、自分を取り巻く世界の解像度を更に上げられるのではという期待があり、受講を決めました。
▲影のリサーチ毎回の授業で新鮮な気づきがあるので、ひと口に述べるのは難しいですが、『光と影』についての学びが特に印象に残っています。 もともと基礎造形専攻の授業で取り組んだデッサンを通じて、自分の目がまるで入れ替わったように、ものを見る時同時に光を意識的に見るようになった感覚の変化を感じていました。
授業では写真、美術、インテリアなどジャンルレスに作品を知ることができたので、それぞれの時代的な広がりなどについても知ることができて面白かったです。特に好きだった作品は、ナムジュンパイクの『マグネットTV』やリー・キットの展示「僕らはもっと繊細だった」です。私たちが普段見ているものが本当はなんなのか、目を凝らしたくなるような気持ちにさせてくれました。
また、個人的に「影の写真を撮ってくる」という課題が印象に残っています。クラスメートの写真を通じて、その人が日々どんなものを見て、どのように感じて生活しているのかを追体験できたような気持ちになりましたし、それぞれの視点の違いが反映されていたのがとても面白かったです。カメラや映像など、メディアに日常的に触れている人にはまずおすすめです。「メディア」という大きな括りで歴史や代表作品を体系的に知ることができるのは、この授業ならではだと思います。
ただ私が一番おすすめしたいのは、日常生活の中で、自分の内省的な感覚を他のメディア(言語でも、非言語でも)に置き換えることに大きな価値を感じている人です。感じたこと、考えたことを言葉にして綴ってみたり、写真に撮って納めたり、音楽にしてみたり。外からの刺激を受けた時の自分の感覚の変化を味わうのが好きな人は、この授業を受けることで、これまで言葉にできずモヤモヤ抱えていた感覚がうまくアウトプットできたり、既に先人が色々な方法でやっていることを知ることができたり、とにかく毎週学校に来るのが楽しみになること間違いなしです。知識や経験豊富な先生たちやクラスメートとの交流でさらに学びが深まったり、新しい視点に気づくことが出来るのも刺激になります。
週に1度夜間だけなので仕事との両立もしやすいですし、ぜひ多くの人がこのメディア創造コースをさらに発展させていってくれることを期待しています。閉じる
説明会・授業見学
メディア創造コースでは、ご自宅から視聴できるオンデマンド形式の説明会&体験授業を実施しています。
「映像」と「音響」をテーマに、新たな視点と創造性を育む本コースの魅力を、約45分の動画でご紹介。授業の雰囲気を感じながら、手を動かす楽しさや新しい発見を体験いただけます。
申込フォームにご登録いただくと、限定公開のYouTube動画URLをお送りします。お好きな時間に、何度でも視聴可能です。
※視聴状況を管理しているため、お申込みいただいたご本人のみご覧いただけます。
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説明会について

学校説明会
桑沢デザイン研究所では渋谷校舎での学内説明会を年間8回実施しています。受講をお考えの方にとって、十分な参考となる内容となっています。
また学校見学や個別相談(オンライン可)も実施しています。
お申込み後、順次日程調整のメールをお送りします。 -

授業見学
メディア創造コースに興味のある方に向けて、 実際の授業をご覧いただける「授業見学」を開催します。
通常の授業にそのまま参加者の方をお迎えする形式のため、当日のご案内は最小限となりますが、教室の雰囲気や学生の学びの様子を自然にご覧いただける機会となっております。
前半のレクチャーでは原理や背景について学ぶ場面を、後半のワークショップでは実際に体験しながら取り組む様子をご覧いただけます。授業見学お申込み
【見学日】
2025年12月03日(水)
ストップモーションアニメ / 制作体験「音響×映像」
講師:玉置淳先生
2025年12月10日(水)
VR技術と展開 / 利用体験「VRカメラの使い方」
講師:玉置淳先生
2026年01月21日(水)
イマーシブ表現の現在と未来(レクチャーのみ) / 制作体験「VR×ストーリー」
講師:待場勝利先生 -
【授業見学 当日の流れ】
受付開始:18:25〜
桑沢デザイン研究所(本校舎)2階の事務窓口へお越しください。
受付後、担当スタッフが教室までご案内いたします。
見学はお一人につき1回のみとなります。
見学時間は 18:40〜20:10(約1時間30分) です。
ご都合が合わなくなった場合は、下記までご連絡ください。
kouhou@kds.ac.jp(進路支援課)
募集概要
| 応募資格 | 1. 高等学校卒業以上の既卒の方及び卒業見込の方。 2. 高等学校を卒業した方と同等以上の学力があると認められる方。 |
|---|---|
| 願書受付期間 | 2025年12月1日(月)~2026年3月27日(金)必着 ※提出書類の先着順にて受付を行い、定員になり次第締め切ります。 |
| 出願の流れ | 1. WEBより出願登録をしてください。 2. 応募資格を確認し、桑沢デザイン研究所より手続き書類が発行されますので、期日までに書類の送付と、学費の納入を行ってください。期日は発行される書類に記載があります。 3. 学費の納入と書類の確認ができ次第、入学が確定します。 *事前にご用意いただく書類 ※Kuwasawa Design Studioの2つのコースの受講を希望する場合、証明書の提出は1通で構いません。 最終学校の卒業証明書、大学・専門学校に在籍中の方は、在学証明書でも可。 ※証明書が旧姓で発行される場合は、戸籍抄本を一緒に提出してください。 また、これまでにKuwasawa Design Studio・夜間附帯教育・総合デザイン科・専攻デザイン科に出願もしくは通っていたことがある方は、証明書を追加で提出する必要はありません。 ※外国籍の方は、「在留カードのコピー(表面・裏面)」と「パスポートのコピー(氏名・パスポート番号等が記載されているページ)」を提出してください。 ※入学後に疾病等のため受講に耐えられないと判断した場合、入学許可を取り消すことがあります。 |
| 入学手続き | 出願条件を満たした方には、WEB出願後に入学手続き書類を発行します。 手続き書類の郵送提出と学費の納入をもって入学が確定します。 |
| 受講料(半期) | 入学手続き書類に記された期日までに納入してください。 ※入学許可により一度納入した受講料は、理由の如何にかかわらず返金いたしません。 220,000円(税込み) |
| 開講期間 | 4月~7月下旬 |
| 修了 | 修了と認定された方には修了証書を交付します。 |
映像や音響の
原理を知ることで、
日常がまったく
違って見えてくる
桑沢デザイン研究所では、2025年9月から社会⼈・⼀般の⽅向けの夜間プログラム「メディア創造コース」を始動しました。ここでは、「映像」や「音響」と出会い直し、新たな活用の仕方を探る講義や実習が用意されています。日々の暮らしに新たな視点を提供するメディア創造コースの内容について、担当の御手洗陽先生、玉置淳先生に聞きました。
「いつもとは異なる仕方で
世界と出会うこと」
「メディア創造コース」では、どのような体験ができるのでしょうか?
御手洗このコースを立ち上げた背景には、私と玉置先生が続けている共同研究があります。テーマは、「VR(仮想現実)が新しい美的体験を生み出す可能性」です。現在、活用の可能性が模索されているVRの世界には、テレビやスマートフォンの画面のようなフレームがありません。VRで描く世界は“生活そのもの”なので、私たちは枠に制約されない映像+音響の利用のかたちを探っています。

玉置ポイントは、「いつもとは異なる仕方で世界と出会うこと」です。半年間の授業を通して、普段当たり前に身のまわりにある「光」や「音」をまったく別の方法で再認識してほしいと思っています。これはメディアの再発見と新たな活用につながる体験になると考えています。
御手洗現代の私たちはさまざまなメディア機器を日常的に使っていますが、映像や音響との出会い方はそれほど自由ではなく、むしろ制約された状態にあります。そこで桑沢デザイン研究所の創立者である桑澤洋子先生がよく言っていたように「概念砕き」をして、いつもとは異なる使い方を試すことで、新鮮な体験をしてもらおうと思っています。具体的には、より多様で複雑な響きに取り囲まれていることを実感できる「サウンドスケープ」のアイデアや、光と響きが連動する「ヴィジュアル・ミュージック」の工夫、映画的な光と影の効果を空間へ展開した卒業生・倉俣史朗のインテリアの取り組みなども含めて、事例の共有に併せて体感的にも理解を深める機会にしていこうと思います。
「手を動かしながら
考える・作りながら学ぶ」
「メディア創造コース」の教育内容を具体的に教えてください。
御手洗毎回、前半はレクチャー、後半は実習の形式で進めます。私が担当するレクチャーでは、映像や音響の実験的・定番的な利用のかたちをTV・WEBの映像や展示、インテリアやファッションのサンプルから探っていきます。例えば19世紀のヨーロッパで作られたアニメーション装置である「驚き盤」以来、光と影を映像へと活用する取り組みは、2010年代に入ってもCMや展示などで効果的に用いられてきました。また闇の中を進む光は奥行きや空間を感覚させることができるため、インテリアや建築、ファッションでも広く活用されています。
玉置実習のほうは、「手を動かしながら考える・作りながら学ぶ」という桑沢の教育理念を体感できるものになるでしょう。「メディア創造コース」では、映像や音響のもとになる光や音を実際に体験してみるところから始めます。半期のコースで、驚き盤のほか、コマ撮りアニメ、ゼログラフィー(コピー機を使った画像制作)など、身体を通して原理を学んでいきます。

御手洗実際に手を動かして、映像や音響の原理を知ることで、目の前の日常がまったく違って見えてきます。その感動を体験してほしいと思っています。資格を取得したり、デザインソフトのスキルを身につけたりするより、もっと汎用的で長い時間にわたって意味を持つ“何か”を、日常や仕事に持ち帰ることができると確信しています。




















▲影のリサーチ



